第2回
〜 「シニアの強みは“時間がない”こと。だから、まず“行動してみる”!」 〜
桐原 征雄

桐原征雄氏プロフィール

桐原征雄(昭和19年12月3日生)

昭和42年 3月 熊本大学工学部電子工学科卒業

昭和42年 4月 日本電信電話公社・武蔵野電気通信研究所入社以来、電子交換機,ディジタルファクシミリ,ファクシミリ通信システム,INSモデルシステム,ネットワークオペレーションシステム等の研究実用化に従事。

平成 7年 4月 NTTソフトウェア株式会社入社 以来、各種システム構築,プロジェクト管理に従事。

平成17年    定年退職後、都内日本語学校において非常勤講師としてアジア各国学生の大学院受験を指導

平成18~20年 ベトナム・ハノイにおいて工科大学学生に技術日本語を指導

平成21年より  日本において、オンラインレッスン及び対面レッスンで各国学習者を指導。現在に至る。


コラム

 この「異見・卓見」では、先達の皆様が広範な分野で深く考察され洞察力に富んだ考え方を紹介なさっているので、私はむしろ“自分の行動”を中心に述べることとします。まず、表題ですが

●若者の強みは「失敗しても何度でもやり直せること,やり直せる時間がたくさんある」のに対して
●シニアの強みは「失敗しても、恐れたり気にしたりする時間がない(/長くないこと)<遠からず自分は消滅するので>」

 故に結果として起きるかもしれない失敗を思い煩ったり、評判を気にしたりせずに、思いついたら行動してみる
という意味を表しています。ということで、「私自身の行動例」を中心にお話ししたいと思います。

 まず最近の行動例として「くまモンのスマホスタンド」を思いつき、早速取り組んだことを紹介します。
 2016年の熊本大地震で、熊本城は大きな被害を受け、天守閣の瓦がばらばら落ちたり、櫓の根元の石垣が一本だけ残って健気に支えていた様子は皆様の記憶にあると思います。小学校の遠足から中学・高校・大学と、ことある毎に訪れたお城が酷く傷つき、それでも倒れずに頑張っている様子を見て、「流石、天下の名城。頑張れ!」と声援を送り、ささやかながら「復興城主」としての支援などを行ってきました。その後、修復工事が進められて来ましたが、2019年の秋に熊本を訪ねる用事があり、その合間に久しぶりに熊本城を訪れました。丁度、大天守閣の外観が修復出来て、特別公開されるという日に巡り合い、幸運に感謝しながらお城に向かいました。工事用通路を通りながら大天守閣がだんだん近づくにつれ、巨大なクレーンも間近に見えてドキドキです。そして遂に対面です。ボロボロだった瓦もしっかり直り、雄々しい姿が戻って・・・「よくぞ、ここまで立ち直ってくれた!」と、本当に感動しました。しかし修復はまだ外観だけで、内部はまだまだ時間がかかりますし、その他に「奇跡の一本石垣」を始めとして数多くの櫓や石垣が傷ついたままであり、完全な修復には20年近い時間を要します。

 その時「熊本城が立ち直り、頑張っている様子を伝えたい」併せて「今後長期にわたる修復工事に僅かでも手伝いたい」と考えました。そこで思いついたのが、個人事業で取り組んでいる内の一つ「スマートホン用スタンド」の利用です。これまで北斎の富士などを伝統的な絵をデザインしたスタンドを販売してきたのですが、約400年前に熊本城を作った加藤清正姿のくまモンイラストを見つけ、これと修復中の熊本城の写真とを組み合わせたデザインで売り出そう、そして売り上げの一部を熊本城再建のために寄付しようと考えました。
 くまモンイラストは無料で使用できますが、そのためには熊本県のPR事業者としての登録の上でイラスト利用申請を行い、審査を受けなければなりません。納税証明とか反社会勢力との無関係誓約とかの手続きが結構面倒でしたが、利用許諾事務局の方がとても親切にガイドしてくださり、おかげでなんとかめげずに手続きを完結し、めでたく「くまモンの携帯&スマホスタンド」を作り上げることができました。
 次のステップとして「くまモンの携帯&スマホスタンド」を作ったことを知ってもらい買ってもらわないと、熊本城再建のための寄付をできないので、PRを考えました。
 宣伝用チラシやHPを作ったのですが、その中に「くまモンの協力を得て、スマホスタンドに登場してもらいました」という文言を入れました。ところが、事務局から「くまモンは地方公務員だから、何かの製作に協力は致しませんので削除してください」という注意があり、「協力を得て~登場してもらいました」との表現はNGとなりました。
 【「くまモンの秘密」(著者:熊本県庁・チームくまモン)でも、「特定の企業に肩入れできない」と記述されています】
 「そうか!“協力を得て“がダメなら、自分で勝手に考案した」とすればよいのか!と思いつきました。
 確かにくまモンは地方公務員(熊本県の営業部長)なので、公平性には特に気を配っているようで、数多くの利用申請に対して公平性と新しい挑戦とのバランス取りが大変なようでした。
 その他、いくつかの注意をクリアしてやっとチラシの摺り直しが完成しました。
 良かったらHPを覗いてみてください。 ( http://www17.plala.or.jp/VE-SERVICE/ )
 そして年賀メールの挨拶に「くまモンの携帯&スマホスタンドの販売を始めました。売り上げの一部を熊本城復興のために寄付します」と文言を入れたのですが、『そうか!じゃあ、買ってみようか』と思う人は皆無でした。いくら想っても、あるいはそれとなく言っても、「出来れば買って欲しい」という気持ちを汲み取ってもらうことは難しい。やはり直接言葉や文字でハッキリ出すという行動を取って初めて相手に伝わるということを実感しました。
 「友人(或いは先輩や教え子など)に売り込むのは図々しくて申し訳ないけど、良かったら買ってもらえませんか?」と直接的な表現で伝えることにより、私の気持ちを理解してくれる人も現れてきました。勿論、売り込まれて嫌な気持ちになる、あるいは疎ましく感じる人もいると思いますが、それでも絶交という程ひどいことにはならないだろうし、例えそうなっても思い煩う時間は大して長くありません。更に「気持ちを直接伝える行動をせずに後悔」か「行動をして後悔」のどちらかというと、前者の後悔の方が大きいだろうと考え「何かを起こして軽蔑や無視があっても、少しでも賛同してくれる人がいるなら良し」として行動した次第です。
 今年(2020年)はオリンピックがあるということで、訪日の外国人向けに英文チラシも作って意気込んでいましたが、昨今の新型コロナウイルスで状況が変わって来たので、地道にPRしながら細く長く熊本城再建支援を続けていきたいと思っています。
 なお私の何度かの失敗から、行動するに当たっては出来れば家族、特にパートナーとの関係をなるべく良好に保つことが必要だと考えます。完全に迷惑をかけないなら問題ないのですが、取り組む内容によっては影響が出てくる時もあるし、また自分ではどんなに良いと思っても、独りよがりだったりすることもあるので、やはり他者、特に女性の視点での意見や評価をもらうことも大切だと思います。普段からなるべく意思疎通し、良好な関係を保っておくことが望ましいでしょう。

 最近の行動例を紹介しましたが、次回からは遡って退職時の最初の行動である「日本語教師への取り組みとベトナム行き」「日本語教師としての経験」「個人事業への取り組み」についてお話ししたいと思います。

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